事業内容

樹木の保全対策

■島根県立八雲立つ風土記の丘「長右衛門桜」樹勢回復


平成 28年 2月 10日(水)
風土記の丘「長右衛門桜」は、昭和47年の施設オープン時に、当時の島根県知事の田部長右衛門氏から寄贈されたサトザクラである。その後順調に成長し、見事な花をつけて人々を魅了してきたが、近年樹勢が悪くなり西側の部分は枯れて樹形が大きく崩壊した状態にある。このことを心配した風土記の丘植物園ボランティア団体「ニレの会」代表高取様から当団体に相談があり、樹勢の診断、処方、治療を引き受ける事となり、当施設も承諾された。

  1. 表土の剥ぎ取り:富栄養化した表土をはぎとる 20㎡
  2. 土の撤去:根系に留意して放射状に土壌を撤去 15㎡×20㎝ 3㎥
  3. 病斑の切除:ナラタケモドキの病斑を切除する
  4. 酸素管の設置:排水の改善のため、深さ50㎝に通水管を設置
  5. 改良土敷き均し:土壌改良材ピートモス、パーライト、木炭を合計30%真砂土に混合し、遅行性肥料を散布して敷均す 3㎥
  6. 枯枝の切除:北側の枯れた枝や、切口の悪いものは取り除くまた、切口には殺菌剤を塗布する 伐り戻し 4箇所
  7. 支柱の設置:バランスが悪くなった樹冠を、東側から支柱で支える 6カ所
  8. 立入り禁止柵:踏圧防止や養生のため、周囲にロープを張り立入り禁止とする 杭9本 ロープ24m

平成19年4月11日の状態 

平成27年9月19日の状態

エアースコップで硬く締まった表土をはぎとる

土壌改良、酸素管設置など ナラタケモドキと拮抗させるためバーク堆肥、落ち葉の敷設

当日ボランティアで治療に当ったニレの会と樹木医会会員25名


■松江市 H邸クロマツ樹勢回復

平成23年2月10日実施
松江市内には、江戸時代中期に植えられたマツがほとんど無くなってしまったが、このマツだけ唯一残っている。
樹高は5mと低いが、枝張りがその4倍もある裾が広がった高砂マツである。
近年弱ってきたため施主から相談があり、炭と菌根を活用した樹勢回復を行った。

  1. 表土の剥ぎ取り:富栄養化になった表土をはぎとる
  2. 土の撤去:根系に留意して放射状に土壌を撤去
  3. 木炭敷設:針葉樹の木炭を敷設 3.6㎥
  4. 菌根菌散布:マツと共生する菌根菌を散布
  5. 覆土:腐植の無い砂質土を表面に敷均し

平成22年の状態

施主と治療に当った会員外11名

表土の剥ぎ取り(エアースコップ、人力による)

木炭敷設後菌根菌を散布


■石見銀山 大森地区ソメイヨシノ樹勢回復

平成22年度より、地元大森自治会の要請もあり、数年間ボランティア活動を行った。観光客の多い沿道にソメイヨシノが植栽されており、「テングス病」罹病等による衰弱木が多数見られ、枯枝落下の危険性も高い状態であった。
樹木医会では、地元のみなさんにソメイヨシノの特性や保護活動の有効性について研修会を実施し、地元のみなさんと協働して樹勢回復作業を実施してきた。なお、実施した作業の主な内容は、下記の項目である。

  1. テングス病罹病枝および腐朽枝の切除:高い木が多く、腐朽枝も多いため、高所作業車が不可欠。
  2. 土壌軟化作業:土壌が非常に固く締まっている為、通気性・透水性が悪くなっており人力及び専用機器を用いて改良。
  3. 施肥:寒肥として混合肥料を施用。
  4. 不定根誘導:幹部腐朽部から発生した不定根を、ミズコケ入りの筒でカバーし、地上部まで誘導。
  5. 地元住民の方々の協力を得て、上記樹勢回復作業を実施していますが、テングス病罹患、腐朽の進行等により、継続的な管理作業が必要です。この活動を、今後も維持していくためには、地元住民のソメイヨシノへの熱い想いだけでなく、世界遺産の景観維持の観点から、行政機関等の協力・参画が必要と思われます。

H22,2,28 大森小学校におけるサクラの治療ボランティア活動風景(てんぐす病除去作業)

H22,2,28 大森小学校におけるサクラの樹勢回復ボランティア風景(不定根誘導)

当日参加した地元ボランティアと会員22名