事業内容

樹木の診断

■嫁ヶ島クロマツ樹勢調査

近年、宍道湖に浮かぶ観光名所「嫁ヶ島」のクロマツが衰弱してきたため、松江市の依頼を受け、平成20年より樹勢診断や回復処置方法の提案、地元環境保護団体の樹勢回復作業の技術指導等を行ってきた。
現地調査の結果、クロマツの生育上の問題として

  1. 湖面との標高差が少なく、地下水位が非常に高いため、生育に必要な有効土層厚が不足していること。また、根系の伸長が限られるため、樹体の支持力が低下し、支柱等が必要な個体があること。
  2. 増水時には島全体が浸水し、土壌中の酸素が不足し呼吸困難な状態となっていること。
  3. 北西の季節風の影響を受け、波浪による表土流失・土壌吸出し現象が見られ、根系が露出していること。
    また、漂着ゴミの堆積や鳥糞により、土壌の一部が富栄養化状態となっていること。
  4. 来島者による踏圧のため、土壌の固結化がみられること。
  5. 太枝欠損箇所や根腐れ部等から材腐朽が進行しているものがみられること。
  6. 病虫害の発生もみられるが、離島のため細やかな観察処置がし難いこと。


■隠岐の島町天然記念物樹勢モニタリング

隠岐の島町で天然記念物に指定されている樹木のモニタリング調査を、教育委員会から依頼を受け、平成23年度から行っている。
平成27年度にモニタリング調査を行った天然記念物

  • 1、玉若酢命神社の八百スギ  隠岐の島町 下西  国指定(S4.12.17)
  • 2、かぶら杉         隠岐の島町 中村 県指定(S43.6.7)
  • 3、春日のクロマツ群     隠岐の島町 布施 県指定(S42.5.30)
  • 4、唐傘の松         隠岐の島町 中村 町指定(H10.1.23)
  • 5、大山神社のスギ      隠岐の島町 布施 町指定(S52.4.11)
  • 6、岩倉の乳房杉       隠岐の島町 岩倉 県指定 (S40.5.21)

■神門通りクロマツ根系調査・樹勢診断

出雲大社神門通り道改修工事に伴い、街路樹クロマツの根系発達状況や樹勢について調査を行った。
歩道部下の根系調査は、敷設されているインターロッキングブロック舗装や植枡枠を取り除き、その下に伸張している根系を掘り出し調査を行った。
根系の掘り出しは、根を傷めないために、手掘りで慎重に行うと共に、エアースコップを用いた。また、掘り出した土砂は周辺の美観や作業効率を考慮して、バキュームカーによる吸い取りを行った。


■街路樹の危険木診断

近年、道路脇に植栽されている街路樹の大木が倒壊し、死亡事故や物損事故が発生しており、その対策が課題となっている。
しまね樹木医会では、危険木診断技術の向上を図るため、さまざまな研修を重ねるとともに、県内の一部の街路樹について危険度診断を行っている。

  1. 目視観察:樹皮枯死・欠損・腐朽・開口空洞・病虫害・傾斜・根上がり・建築限界超え・キノコの発生・巻き根・分岐部異常等
  2. 鋼棒貫入:腐朽等の異常確認
  3. 打音:木槌による打診による内部確認
    ※現在、全国の調査現場では、島根県で開発、特許登録された打撃音樹内部腐朽簡易診断装置「ぽん太」を活用し、現場での調査断面及び撮影画像等のデータ保存によるよりスムーズな調査管理が行われている。

以上が一般的に行なわれる簡易診断であるが、必要に応じて「ドクターウッズ」等の診断装置を用いた精密診断を行っている。

主な調査項目は

街路樹診断風景

打撃音樹内部腐朽簡易診断装置「ぽん太」による診断風景


■巨樹巨木の精密診断

神社仏閣や史跡などにおける倒木等の被害発生が危惧されるなか、通常の診断では解明できない貴重な老齢大径樹の診断については、精密内部腐朽診断器具「ドクターウッズ」等を用いて総合的に診断し、その対応処置方法について提案を行っています。
これまでは、市民に親しまれていた貴重な樹木が、安易な診断により伐採処分されていましたが、より細やかで正確な調査診断を実施し、複数名の樹木医で多面的に解析する事により、種々の樹勢回復法を提案したり保護育成に努めています。
一方、老齢衰弱樹木や重大病虫害罹樹木については、倒木等の被害発生を憂慮し、残念ですがその最期を判定する事も、樹木医としての責務です。

出雲大社参道クロマツ精密診断

精密診断(ドクターウッズ)の解析